「週末のフットサル、楽しかったけど足が重い…」
「手持ちのアンダーアーマーを着て寝れば、マッサージ代わりになるんじゃ?」
そんな風に考えていませんか?
結論から言います。残念ながら、それは「裏技」ではなく「自爆行為」です。
翌朝、スッキリするどころか、ドッと疲れが残る可能性があります。
なぜプロのアスリートは、寝る時にコンプレッションウェアを着ないのか?
スポーツトレーナーの私が、生理学的な視点から「なぜ寝る時は脱ぐべきなのか」を解説します。
[著者情報]
👤 著者プロフィール: 石川 達也(いしかわ たつや)
スポーツトレーナー / コンディショニングコーチ
サッカーチームのトレーナーを歴任後、市民ランナー向けのコンディショニングジムを経営。「休むこともトレーニング」をモットーに、科学的根拠に基づいたリカバリー法を指導している。自身も現役時代、間違ったケアで失敗した経験を持つ。
【結論】寝る時のコンプレッションは「ナシ」。プロが絶対にやらない3つの理由
運動用のコンプレッションウェアを寝る時に着るのは、医学的にも生理学的にも「ナシ」です。その理由は大きく3つあります。
1. 血行障害のリスク
日本血栓止血学会のガイドラインでも、就寝時の弾性ストッキング着用は(医師の指示がない限り)推奨されていません。寝ている間は血圧が下がり、血流が緩やかになります。そこに強い圧力をかけると、血流を助けるどころか「止血帯」のように流れを阻害してしまう恐れがあります。
2. 自律神経の乱れ
睡眠中は、体をリラックスさせる「副交感神経」を優位にする必要があります。しかし、強い締め付けは体にストレスを与え、興奮状態の「交感神経」を刺激してしまいます。これでは、体は休まるどころか、一晩中緊張状態を強いられることになります。
3. 深部体温の放熱阻害
人は眠りにつく時、手足から熱を放出して深部体温(体の中心の温度)を下げます。ピタッとしたコンプレッションウェアは熱をこもらせやすく、このスムーズな体温低下を妨げてしまうため、睡眠の質が低下します。
「着圧=血行促進」の罠。なぜ寝ている間は逆効果になるのか?
「でも、着圧ソックスはむくみに効くでしょ?」と思うかもしれません。
ここで重要なのが、「重力」の関係です。

コンプレッションウェアは、基本的に「立って活動している時」のために設計されています。重力に逆らって血液を心臓に戻すのを助けるための圧力です。
しかし、寝ている時は体がフラットになり、重力の影響を受けにくくなります。この状態で強い圧力をかけるのは、水が流れているホースを足で踏むようなもの。逆に流れを悪くしてしまうのです。
どうしても着圧したいなら。「就寝専用ソックス」という唯一の例外
「それでも、足のむくみが気になって眠れない…」
そんな場合は、「就寝専用」として販売されている着圧ソックスを選んでください。
「メディキュット」の寝ながらシリーズなどが代表的です。これらは、寝ている時の血流を阻害しないよう、圧力が極めて低く(弱く)設計されています。
ただし、これはあくまで「ソックス」の話。全身を締め付けるコンプレッションウェアは、やはり就寝時には不向きです。
お金をかけずに疲れを取りたい!ウェアに頼らない「0円リカバリー術」
「専用のリカバリーウェアは高いし、手持ちでなんとかしたい」
その気持ち、よく分かります。でも、ウェアに頼らなくてもできる最強のケアがあります。
それは、「物理的に血流を回す」ことです。
1. 温冷交代浴(シャワーでOK)
お風呂で、温かいお湯と冷たい水(またはぬるま湯)を交互に浴びます。血管が拡張と収縮を繰り返し、ポンプのように血流が促進されます。
- 方法: 40℃のお湯(3分)→ 30℃くらいのぬるま湯(1分)を3〜5セット繰り返す。
2. 寝る前ストレッチ
布団の上で、股関節や肩甲骨をゆっくり伸ばします。筋肉の緊張がほぐれ、副交感神経への切り替えスイッチが入ります。
これなら0円で、しかも医学的にも理にかなったリカバリーが可能です。
それでもウェアが欲しいなら。1,900円で買える「ワークマン」の選択肢
「何か着て安心したい」という方には、ワークマンの「MEDIHEAL(メディヒール)」をおすすめします。
価格は上下で約4,000円(トップス1,900円)。
これはコンプレッション(着圧)ではなく、鉱石を練り込んだ繊維による血行促進効果(一般医療機器)を持つリカバリーウェアです。
締め付けがなく、ゆったり着られるので、就寝時のパジャマとして最適です。高い専用ウェアを買う前の「入門編」としても優秀ですよ。
「脱ぐ」こともトレーニング。今夜はパジャマでぐっすり眠ろう
コンプレッションウェアは、あなたをサポートしてくれる頼もしい「鎧」です。
でも、戦いが終わったら鎧を脱ぐように、寝る時は体を解放してあげてください。
「脱ぐ」勇気を持つこと。
それもまた、明日のパフォーマンスを上げるための重要なトレーニングです。
今夜はコンプレッションを脱いで、お風呂にゆっくり浸かってみてください。翌朝の体の軽さが、その答えを教えてくれるはずです。
[参考文献リスト]
- 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン - 一般社団法人 日本血栓止血学会
- McDavid(マクダビッド)よくある質問